書き込みを削除したい!

一昔前までは情報の発信を行う、あるいは評価の対象となるのは企業あるいは著名人という限られた一部の人でした。しかし、現在では誰もが、ブログをはじめSNSなどを通じて匿名・実名で色々な情報を発信することができるのであり、評価し、評価される時代になっています。

このように多くの情報にアクセスすることができるようになると日常生活においては非常に利便性が高まりますが、反対に公開されている情報の中にネガティブな内容が含まれていた場合、そうしたネガティブな情報が拡散するスピードも格段にあがっている状態となっています。

ネガティブな情報の書き込みを見付けたら、それによる思いがけない被害が拡大してしまう前に、素早く訂正・削除する、あるいは対処する必要があります。

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削除の種類

一言で削除といっても ① サイトを削除したいというパターンと、② 検索結果を削除したいというパターンの2つに大きく分かれます。

① サイトの削除

書き込みそれ自体の削除を望む場合

② 検索結果の削除

サイトの書き込みそれ自体は消されなくてもいいから、検索結果だけ削除してほしいという場合

【 個別サイトの削除 】

構図

私たちが掲示板やSNSに投稿するときには、そのサイトにアクセスして、書き込んで「送信」ボタンを押すだけなのですが、その背景では発信者が利用しているインターネット業者およびサイトを運営しているサイト管理者が関与して初めて投稿が完了します。

※ インターネット業者とは、発信者が契約しているインターネット契約を締結している会社(KDDIやdocomo等)
 ( 場合によっては契約をしていないフリーWi-Fi等も場合もあります )
※ サイト管理者とは、インターネットを運営している会社(Twitter,Inc. ヤフー株式会社等)

ここでの登場人物は、 書き込まれた○○さん、発信者、インターネット業者、サイト管理者の4名です。削除を行うことができるのは、発信者とサイト管理者です。発信者が削除してくれれば、一番手っ取り早いのですが、そもそも誰が書き込んだかわからない場合等も多くあります。そこで、サイト管理者に対し、書き込みを削除するという手続きをとることができます。

【 方法 】

記事の削除は、法律上特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(通称プロバイダー責任制限法)に基づいて送信防止措置を行うことを意味します。
その方法は、下記のとおり「ウェブフォームからの削除依頼」「ガイドラインに則った削除依頼」「法的手段による削除依頼」など様々な方法があります。それぞれメリット・デメリットがあります。

ご自身によるウェブフォームなどからの削除依頼

書き込みがされたそのインターネットサイトに問い合わせフォーム(ウェブフォーム)がある場合、そこに削除依頼をすることが出来ます。

メリット

この方法は、ご自身で簡単に行うことができ、費用もかかりません。

デメリット

サイト管理者によって異なりますが、なんらの対応もされず連絡も来ないというケースは少なくありません。
ご自身で行うことができる手続きではあるものの、削除を求める理由をサイト管理者に詳細に説明する必要があるところ、その説明が不十分であったために、結果として削除に至らないということもあります。

弁護士によるウェブフォームなどからの削除依頼

メリット

上記のとおり、ウェブフォームによる削除依頼はご自身で行うことができる手続きです。しかしながら、デメリットとして記載したとおり、削除をしてほしい理由等について十分な説明を行うことができず、対応してもらえない、あるいは応答はしてもらえたが結果として削除に至らない、というケースは少なくありません。
弁護士に依頼した場合には、削除の理由について、権利侵害性、削除の必要性等をしっかりと主張することができ、本来削除してもらえたはずなのに、説明不足で削除してもらうことができなかったという自体を避けることができます。
感覚としては、個人の方がサイト管理を行っている場合、弁護士が削除依頼をすると、比較的迅速に削除の対応をしてくれることが多いです。
他方、サイトが大手になると、弁護士から削除依頼をしても対応をしてくれなかったり、ガイドラインに則った請求をしてください、と言われることが多いという印象です。

デメリット

ご自身で対応可能な手続きですが、弁護士に依頼することによって弁護士費用が発生するため経済的な負担が発生します。

ガイドラインに則った削除依頼

削除については、一般社団法人テレコムサービス協会が作成したガイドラインが存在します。一般社団法人テレコムサービス協会はインターネットサービスプロバイダをはじめとするICT関連企業が会員となって構成される任意団体です。あくまで任意団体ではありますが、大手コンテンツプロバイダ各社が会員として加盟しており、会員企業の運用は基本的に一般社団法人テレコムサービス協会のガイドラインの則ったものになっています。その影響からか、非会員の企業の運用も一般社団法人テレコムサービス協会のガイドラインに準拠することが多くなっています。この一般社団法人テレコムサービス協会が用意している書式は、通称テレサ書式と呼ばれています。流れとしては..

1)宛先
サイトの管理者やそのサイトが設置されているサーバーの管理者に対して依頼を行います。その際は、権利侵害が行われているサイトをhttps://www.aguse.jpなどで検索すると便利です

2)依頼書の作成
宛先を特定後、テレサ書式を用いて「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」を作成します。
テレサ書式は下記のようなものです

侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書

これに沿って記載していきます。
提出にあたっては、添付資料として下記も求められているので同封を忘れないようにしましょう。
・印鑑登録証明書
・本人確認資料
 個人の場合には運転免許証等公的な身分証明書等
 法人の場合には登記事項証明書等
・請求者の権利が侵害されていることを示す証拠資料

3)サイト管理者等の対応
請求を受けた管理者等は、発信者に連絡をとることができる場合、発信者に自主的解決を促すこともあります。しかし、それが困難である場合には、発信者に連絡をとり、削除等の措置を講じて差し支えないかを尋ねます。大抵の場合には7日間くらい待って、発信者から連絡がない場合には、サイト管理者等が削除の可否を判断することになります。

メリット

一般社団法人テレコムサービス協会がガイドラインや書式を用意してくれているため比較的に容易に、ご自身でも手続を行うことができます。

デメリット

書式があるとはいえ、記載する項目は「侵害されたとする権利」、「権利が侵害されたとする理由」などを記載する必要があります。ここは法的な知識を要する箇所であり、この設定を誤ると削除の対応をしてもらえなくなる可能性もあるという重要な箇所です。したがって、手続としては容易なのですが、実際削除に至るという結論まで見据えると、ご自身で行うにはなかなかハードルの高い手続かもしれません。

法的手段による削除対応

テレサ書式や任意の削除に応じてもらえない場合には、裁判手続を利用し、記事の削除を求めて行くことになります。記事の削除を求める裁判手続は「仮の地位を定める仮処分」とよばれる民事保全法上の手続です。ちなみに仮処分では申し立てた人(削除を求める人)のことを「債権者」、相手方(削除を求められたサイト管理者等)のことを「債務者」と呼びます。仮処分の流れとしては..

1)投稿記事削除仮処分命令申立書の提出

2)書記官による形式審査
資料の追完等の指示を受けますので、必要に応じて債権者面接までの間に資料を追完します。

3)事件番号の付与・債権者面接の日程調整
裁判所によって異なるところですが、東京地裁では債務者を呼び出す前に債権者面談を行いますのでその日程を決めます。

4)債権者面接
債権者面接では、裁判官と債権者とで具体的な事案の把握を行い、必要に応じて主張の追加や資料の提出を求められます。主張や資料が求められた場合には、双方審尋期日を設定するより前にもう一度、債権者面接が開かれることがあります。おおよそ1回から2回程度開かれることが一般的です。
債権者面接の最後に債権者と債務者双方が出席する双方審尋期日の日程を決定します。債務者が海外法人等の場合には、呼出状や下記の資料送付の日程も考慮し、約3週間後に双方審尋期日を設定することが多いですが、国内の場合には、1週間前後の期間で双方審尋期日が設定されます。

5)切手の納付
債権者面接を終えると、債務者へ呼出状を送るための切手を裁判所に納めます。裁判所はこの切手を用いて、債務者に対して、呼出状を送ります。

6)債権者から申立書副本・疎明資料等一式を債務者に直送

7)双方審尋期日
双方が一堂に会して、削除についての主張を行います。通常1回で結論がでます。

8)担保決定
債権者側の主張が認められると(削除が決定すると)仮処分決定発令の為に供託する必要があり、その金額が裁判官より言い渡されます。
削除の仮処分命令の場合には、記事の分量にもよりますが、30-50万円ほどかかります。
この担保金は、違法・不当な仮処分の執行によって相手方が受けるであろう損害を担保するためのものです。通常は、一定の手続を経て、還付を受けることができます。

9)供託
債権者は法務局で供託を行います。

10)供託書と目録の差し入れ
供託が完了したら、債権者は裁判所に供託が完了したことを証する供託書と発令に必要な目録(当事者目録・発信者情報目録・投稿記事目録)を提出します。

11)仮処分命令発令・決定正本交付

12)削除
仮処分命令が発令され、債務者がその送達を受けると、そこから数日から1週間程度で削除に応じてくれることが多いです。

13)執行
万が一、債務者が削除に応じない場合には、執行の手続をとることができます。執行の申立をすると、お相手が削除するまで、裁判所が命じた金額をお相手に支払わせることが可能です。

メリット

権利侵害性が間違いない場合には、確実に削除という結論に至らしめることができます。一般的な裁判はお時間がかかる手続ですが、仮処分であれば申立てから削除までの間で1〜2ヶ月の期間で解決に至ります。

デメリット

裁判手続であるため、弁護士に依頼することが多く、弁護士費用が発生します。単純に削除を求める手続を行う場合には、発信者から金銭を受領することはできないので、弁護士費用分の経済的ご負担は発生することになります。

なお、弁護士が手続を行う場合には、裁判外の手続と裁判上の手続をほとんど同時並行で行い、ロスタイムが発生しないような手順を追うことができます。

ミニコラム

〜 全部消せるわけじゃない! 〜

削除請求のご相談をいただく際に、ページ全体を消したいとお考えの方が少なからずいらっしゃる印象です。しかしながらあくまでも記事の削除は法律に基づいた請求なので「違法」な箇所のみ削除が認められます。
掲示板であるならば145番の書き込みとか、ブログならば○年○月○日のブログ(場合によっては、その中の何段落とさらに限定します)というように違法な部分のみが削除されることになります。

〜 消したはずなのに 〜

削除手続は完了したはずなのにまだ消えていないというお話をいただくことがあります。
原因は3つ考えられます。1つは、ご自身のパソコンのキャッシュが残っているケースです。インターネットに接続する際には、同一URLを以前に一度読み込んでいると、改めて読み込みを行わずに以前の情報をそのまま表示されます。つまり最新の情報は削除されているのですが、古い情報が表示されているので、削除されていないように見えるという現象です。
この場合にはリロードをすることによって、パソコンが新たな情報を読み込むので削除された新しい情報を表示することができ、解決します。
もう一つの原因は検索サイトのキャッシュです。検索サイトが有する情報が最新のものになるまでの期間、消したのに検索結果に表示されるという現象が起こることがあります。これは放っておけば、経時的に消えることが一般的ですが、いち早く削除したいという場合には、キャッシュの任意削除請求という手続があります。この点は弁護士と相談して、どこまで手続を行うべきか検討が必要です。
最後の原因として、ミラーサイトの存在です。掲示板の内容を定期的にコピーして、同一の内容を掲示するサイトが存在することがあります。これらがあると、せっかく投稿記事の削除を完了しても他のサイトでも同一手続を行わなければ本当の意味で手続が完了ということができなくなります。

注意!削除代行業者について

インターネット等を見ていると、削除代行業者というものが存在します。これらを名乗るもの全てに該当するわけではないと思いますが、削除代行業者を利用しようと考えている場合には、注意が必要です。

平成29年2月20日に東京地方裁判所において出された裁判例はこの点に関連した裁判例なので紹介しておきます。

この事案では、男性が削除代行業者に記事の削除代行13件を依頼するという契約を締結しました。業者はこの契約に基づいて手続を取り、結果として10件の記事を削除したので、男性は対価として業者に対し約49万円を支払いました。
しかし後日、削除代行業者が行った削除の行為は非弁行為(弁護士でない者が報酬を得る目的で弁護士しか行えないことを行うこと)に当たるため、自分とこの削除代行業者の契約は非弁行為という違法な行為を約束する契約であって無効だと主張して、支払った金銭の返金と非弁行為に加担させられたことに対する精神的苦痛に対する慰謝料の支払を求めた裁判です。
裁判所は、この削除代行業者の行為は非弁行為(弁護士でない者が報酬を得る目的で弁護士しか行えないことを行うこと)に当たるとして、削除代行業者と男性との契約を法的に無効なものだという判断を下しました。
この裁判では削除代行業者が行った削除行為まで無効にするという判断はされていないようですが、個人ではどう書いたらよいかわからないからといって、削除代行業者に依頼しても、今後は、サイトが削除代行業者からの削除依頼を受け付けなくなるでしょうし、削除代行業者に依頼すること自体無意味となることも十分考えられます。十分注意しましょう。

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